地絡現象~非接地式電路における地絡電流①~
「地絡」とは?
配電線路に発生する地絡は、絶縁物の絶縁劣化、損傷、汚損や湿気によるもののほか、露出した充電部に動植物が接触するなどにより大地に電流が流れるもので、感電災害、火災、通信障害、短絡事故の原因にもなる。地絡は1線および2線地絡、さらには瞬間的、持続的、間欠的と多様で複雑な現象である。いったん停電すると絶縁が回復し、再送電が成功する確率は高いことが特徴だ。
今回は、地絡発生時、どのような経路で地絡電流が流れるか、どのように各相の電圧が変化するかについて追究してみる。
地絡電流の基礎
写真1 零相変流器(ZCT)
図1 地絡の表し方
(2)地絡電流の検出
本テーマでは、非接地式配電線路における地絡検出について、持続的な1線地絡を対象に、単相2線式と三相3線式の回路を使って説明する。なお、電源の電圧、周波数は一定で変動がなく、三相電源は対称三相電圧として配電線における電圧降下、記載以外の定数は考えないものとする。
地絡電流を検出するには貫通型のZCT(零相変流器)が使用される。ZCTには極性があり、一般にK、Lで表示され、K側からL側に流れる電流を検出した場合をプラス、逆方向の場合をマイナスとしている。したがって、同じ電流でもK、Lが逆になると、検出される電流は大きさが同じでも位相が反転する。
ZCTは単相2線式であれば2線を、三相3線式であれば3線を一括で貫通させ、各配電線に流れる電流の合成値(ベクトル和)から、その位置での地絡電流を検出することができる。
配電線には負荷電流なども流れているが、ZCTはどのように地絡電流だけを検出できるのだろうか。また、ZCTの設置場所によって地絡電流はどのように流れるのだろうか。ここでは、接地線のない非接地方式配電線を例に解説する。
中性点接地方式と地絡電流
(1)中性点非接地方式
電力会社より一般需要家への電力需給は中性点非接地方式の三相3線式が用いられている。中性点非接地方式のメリットは、
・地絡事故時の地絡電流が小さい
・高低圧混触時の低圧回路電位上昇の抑制
・通信線に対する電磁誘導障害の抑制
などがある。その反面、
・地絡電流の検出が難しい
・地絡事故時の条件により異常電圧が発生するおそれがある
といったデメリットもある。
(2)中性点接地方式と地絡電流の流れ
図2に示すように、電路が中性点接地方式の場合、地絡電流
I
˙
gは大地へ流れたあと、大地から接地線を通って電源に戻る。電路が中性点非接地方式の場合は、接地線がないので配電線に分布する対地静電容量Cを通り、電源に戻ることになる。そのため、地絡電流は対地静電容量と密接な関係がある。
図2 地絡電流の経路
配電線路の対地静電容量と充電電流
(1)充電電流と等価回路
地絡電流を考える前に、対地静電容量と充電電流について解説する。水平な地面と平行に張られた非接地式の1線の配電線において、図3(a)のように配電線と対地間に交流電圧を印加すると、配電線と対地間に分布する対地静電容量を通して充電電流が流れる。
ここで、分布する単位長さあたりの静電容量は一様にCS[μF/km]として、電圧の大きさをE[V]、単位長さあたりの充電電流の大きさをIS[A]とすると、交流理論から、
IS=ωCSE
ただし、ω=2πf
となる。
また、配電線の電源側端子をP点、他方の端子をR点、長さをl[km]とすると、全対地静電容量(以下、対地静電容量)Cは、
C=CS×l[μF]
であるから、全充電電流I[A]は、
I=ωCS×l×E=ωCE[A]
となる。
また、充電電流は「電源~配電線~対地静電容量~大地~電源」の経路を流れている。
したがって、上式と充電電流の経路から等価回路を描くと図3(b)のようになる。
図3 対地静電容量と等価回路
図4(a)は図3(a)の一様に分布する対地静電容量をn個のコンデンサで表した図である。このように、容量の等しいn個のコンデンサが一様に並列に接続され、それぞれに充電電流
I
˙
s
[A]
が流れているとすると、配電線のa1点、a2点、a3点における電流値は
I
˙
s
[A]
、a1
=
1
I
˙
s
[A]
、a2
=
2
I
˙
s
[A]
、a3
=
3
I
˙
s
[A]
となる。
これをR点からP点まで考えると、a4
=
4
I
˙
s
[A]
、a5
=
5
I
˙
s
[A]
……an
=
n
I
˙
s
[A]
となり、これらを縦軸に充電電流、横軸にa1~an点を取ると、図4(b)のような階段状の分布図となる。実際、対地静電容量は一様に分布しているので、対地静電容量を無限に分割したいと考えるとスロープ状になる。
また、横軸を電路の距離とすると、P点における充電電流の大きさはI[A]、R点では0[A]、充電電流IはR点からの距離に比例するので、図4(c)のようになる。ここで、PR間の任意の位置をQ点としてQR間をm[km]とすると、任意の位置Qにおける電流値Iqは次式となる。
I
q
=
m
l
I
[A]
MMF.7h||4000QEO=L^=447h2_h)?LYGRVSm9XkdYFQ5La7;:eVJYF^LPPUQL)77*NV6GE2kT01NZ^72Q^?=GD;aCJX77H7YnY5I|VGEFWZnkIo[[WYkfJ3W9gi_=YdTaVNF3fl4bWFM9(I]kdg;kjKAl^KXLWUGeZlee^Ai)bl_Q5iB(RAP=U|FT)(flMmmomlo?Oogmdfooo_;7^cmoE?;cK;i*BgWB7a;eYbA?Tb;c*Wo8^?Y?h4W9Th0m8AC(9mWc)AQ`0[KIQfNWbBCgAX)k`F2ib8YRTYl0[LDRCjJImg3ocL?m3`mOooY`oo_3oKMZaZ^]AocY=:f^]jo[]gWeYG6Za7BoV3dB(b?V[GRfo_RT[Z[?6YgHYk?;1HnFXdHLkWLNnLGZZWXeE;;QO7=EGSLJjJNKeoFZZQ]9k4mEfRlgKD1mPOI4BW]2YHMRYHN2YCgAdYi`JGnlM3MP^Q(ajhVHmNe]ClC|D(C|D(B|9f;F4c7[SiS]A|af8^Hm4O)NR?WSR9fLnkhKRWHHf)5Gj]0`Wc8cYSke0b]GDYl7I|cEV0X;Q0:A=*Y0`J`R18DMAfPU2DJQ1K42dXiE7E?Oc;kaH4c(46Q*:fK816P4HfV0*4I1hoU6|g3bB(E6a|80Z*4g06Q*ihhdI6oP3;Dl6)C6S|6i|;)Yc|7HNZ7PgXe3_31TPG:780nQ0c6VaPRJaA031^773W2L5a`o2m0Dc815;CEV4n0PCP7713Q5nN1j0acPcNkM*3VQ[*46O(bicA0?FlLLB0PgBn;5H`*4JJL8X20MH2QD`A5C8C0`55`M261`e2Q=:G1G?1:_7j(*0h;[2](8P8JM7n2]20BDRJ^6*9l95e**hQ88P0FcHhW6LE]X8D5SE0XQJm(ChRB4f[d3*K]Z6::EH0nhha5:_GD)aJfG29n521M2Q?a7h=o^M2AdIR);0S`5PWLn8eB:4ORg]AoY)[BD9KSWMRf9gD]CQ`ia[19XofBPjEQ7(Va3Td3Pb9FoU4PC]mARE8DaBWo(T(NH]iV=1C[FLH0f9PkaU0QEC2`a`)E72NVd5T:kT7Gj5TN=Q`P(PWJ3:)Wd919eT(CYXP*E8ZFTXn]dAZXKDj?R)[F=dQc;1PIhHXQ1i8|F*5:)VRDkFM4=|]UmZU|TLh1QX4n60cPU^TNb1^6mXKY=bPJQdZ0(7*k:lHnDKY==Pj4LW*nZ6REY3GEm)XJjDhXVZkbc)KYE=WWD_K95WHcXK^V:VNYnf*3F(**Z;R)jHCJJ`98lBLkDcboaMAIl[[h=J[EDXjiFOJbFJIe^W)RKFReG|f2NVFnNDSMBd0ZUP*mXM=8(]U[=L?MS]J5VdLLZJ[BAeTHM[C`h=cjLSOm95XEc|iOeO3H[?7Qa8W2`)3cEc*QnV0PlRJk8ZdlN_LTH6MdSHk|gEZ?PNhcgG6n=0ZjfBEe_[1gLJ8mGefGme^18hKajFFh[PjG2lfYMKUNKJb=A]mOYNEV_bXoF5K=|8HA|NfTAT(oNK)_BHXIV95K6TNcHbPBBYEHF8=UC9B_G:P:hVZP^8OFOn[Fg*8f97V^TKbMUgC4G8=HK109Q;*D|XXcCdkWJS7aCGjWggZ9j|kE5JSidK8kFl*OJCXdFcjHN)9WTQ*NJaO^cilO98]?:lba=dUC;lmVcm3cALn05=igUAIHGl89ko(9gojQoLK](_LUXZAH;AkMkM9n?k^jF2gFgS(1X_lejM;M7NZFTinY)ZKjdRmAK_U1?|8_0RZW7QIMXaLGXC]7l3fD]Uc`.mmf
以上から、配電線路に流れる充電電流は、電源から遠ざかるにしたがって小さくなることがわかる。

図4 充電電流の分布
(古屋 正道)