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セクハラ、モラハラを学ぶ【コンプライアンス入門 第17回】
現場で役立つ!
2025.07.30
第17回
セクシュアルハラスメント、モラルハラスメント
セクシュアルハラスメント
セクシュアルハラスメント(以下、セクハラ)は一般に「相手方の意に反する性的言動」と定義される。
男女雇用機会均等法(以下、均等法)の11条に基づき、事業主が講ずるべき措置については、厚生労働大臣が具体的な指針を定めている(「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針」平成18年厚生労働省告示第615号)。
(1)セクハラの種類
①対価型セクハラ
職場において行われる労働者の意に反する性的な言動に対する労働者の対応により、当該労働者が解雇、降格、減給などの不利益を受けること。
「事例」
・事務所内で事業主が女性に対して性交渉を要求したが、拒否されたため、その女性を解雇した。
・出張中の車中において上司が女性の腰、胸など触ったが、抵抗されため、その女性に不利益な配置転換をした。
②環境型セクハラ
職場において行われる労働者の意に反する性的な言動により、労働者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じるなど、当該労働者が就業するうえで支障が生じること。
「事例」
視覚型
・女性の抗議にもかかわらず、パソコンのスクリーンセーバーにヌード画像を使用している。
・女子トイレにビデオカメラの入ったダンボールを設置。
発言型
・顔を合わせると性的な冗談を言ったり、容姿や身体のことについて聞く。
・男性が女性から「○○くん、あっちにいって、クサいから」と言われる。
身体接触型
・キスをしたり、身体を触ったりする。
(2)事業主の講ずるべき処置
セクハラに対して、事業主は以下の処置を講じなければならない(図1)。
①事業主の方針の明確化、その周知および啓発。
②相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備。
③職場におけるセクハラに対して事後の迅速で適切な対応(事実関係の迅速で正確な確認、行為者および被害者に対する適正な措置、再発防止に向けた措置)。
④①~③の措置に合わせて講ずるべき措置(相談者、行為者などのプライバシーの保護、相談や事実確認への協力を理由とする不利益取り扱いの禁止の周知、啓発)。
事業主が上記の措置を講じない場合、厚生労働大臣による行政指導が行われる(均等法29条)。事業主が是正勧告にも応じない場合には企業名の公表の対象となる(均等法30条)。
労働者と事業主との間で職場でのセクハラについて紛争が生じた場合には、均等法に基づく都道府県労働局長による紛争解決の援助(均等法17条)、紛争調整委員会による調停(均等法18条)が行われる。
(3)セクハラを受けた労働者の対応
セクハラを受けた労働者は、被害を回復するために、セクハラの行為者や雇い主である企業に対して損害賠償を請求することができる。裁判例では行為者の不法行為(民法709条)に基づく損害賠償責任を認めている。
また、行為者の雇い主である企業についても使用者責任(民法715条)や職場環境配慮義務違反(民法415条「債務不履行による損害賠償」)に基づいて損害賠償責任が認められる。

モラルハラスメント
モラルハラスメント(以下、モラハラ)とは、肉体的な暴力ではなく、言葉や身振り、態度などで他人の人権、尊厳を侵害する「精神的」な暴力、虐待のことである。
職場では上司、部下、男女間にかかわらず、言葉や態度、文書などで陰湿に繰り返される行為、嫌がらせにより、本人に精神的な苦痛を与えるようなことがモラハラにあたる。
パワハラは上司が部下に対して行う嫌がらせであるのに対し、モラハラは上司だけではなく、同僚や部下が加害者になるケースのある点が特徴である。
(1)モラハラの判断基準
モラハラは精神的な暴力のため、被害者が相手から受けた言葉や態度を、どのように受け取るかに左右される。そのため、通常の範囲内での指導や注意でも、ハラスメントと感じるケースがある(図2)。もちろん、合理的な理由に基づいて行われている指導や注意である限り、モラハラには該当しない。
大切なことは目的、内容、方法、用いられる言葉などが「客観的に必要なのか」「目的に照らして正当なのか」を常に検証することである。
①精神的な苦痛を与えるもの(暴言、罵声、悪口、プライバシー侵害、無視など)
・私生活への干渉。
・ロッカー室、冷蔵庫内の窃盗を疑われる。
・無視、仲間外れにする。
②社会的な苦痛を与えるもの(仕事を渡さないなど)
・社員旅行の参加を拒絶される。
・回覧物を回されない。
・必要な情報を与えない(必要なメールを送信しない)。
・雑用を押しつける。
(2)法的制裁
法的には刑法231条「侮辱罪」が適用される。事実を摘示しなくても、公然と相手を侮辱した者は拘留、または科料に処される。また、事実の摘示がある場合には「名誉毀損罪」が成立する。

プロフィール
降籏 達生(ふるはた・たつお)
兵庫県出身。映画「黒部の太陽」で建設業に魅せられ、大学卒業後、大手ゼネコンに入社。社会インフラの工事に従事する。1995年には阪神・淡路大震災で故郷の崩壊に直面し、建設業界の変革を目指して独立。1998年にハタ コンサルタント株式会社を設立し、代表として建設業界の革新、技術者の育成、建設会社の業績アップに情熱を注いでいる。
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