Q&A
原因不明の瞬時漏電を解決した事例【設備の相談4】
事例で解決!
2023.11.29
相談
ある病院で漏電警報が頻発していますが、数秒で復帰してしまうので原因が特定できません。漏電遮断器を使用しないで漏電監視装置を設置し、漏電時の回路遮断を行わない仕様の場合、原因の特定に最適な方法はありますか?
回答
漏電の発生経緯
今回のような設備仕様は病院では採用されるもので、漏電監視装置の受け持ち範囲が広いほど、漏電発生時の調査範囲も広くなります。さらに、漏電が瞬時になる場合、原因特定の作業は根気よく進めていくしかありません。同様のケースの漏電発生から解決までの事例を取り上げます。
ある病院(1981年に竣工)でのできごとです。ある日、防災センターの中央監視装置で警報が鳴り、漏電の発生を知らせるランプが点灯しました。しかし、すぐに消灯してしまうという現象が発生しました。
電気室の継電器盤内に設置されている漏電警報装置の表示を確認したところ、配電盤のひとつ(非常電灯盤No.3)で発報があったことが確認できました。その後、何ごともなく数日がすぎましたが、再び同様の警報が発報しました。以後、不定期な発報が継続するという状況となり、非常電源系統ということもあって問題解決に着手することにしました。
電力系統の略図と作業内容を図1に示します。調査1では配電盤内での漏電回路を特定し、調査2で電灯分電盤内の漏電回路の特定と問題解決を行いました。

調査1 配電盤内での漏電回路の特定
この建物の漏電警報装置は配電盤ごとに漏れ電流を検出します。今回、発報した配電盤の回路は十数回路あり、そのなかから漏電回路を作業者の手で特定しなければなりません。
作業に必要な測定器はピークホールド機能つきの漏電クランプメーターです。これを回路に設置し、漏電警報の発報を待ちました。
作業手順は図2のとおりで、この作業を繰り返した結果、ある病棟の4階の電灯分電盤で漏電が発生していることが特定できました。

調査2 電灯分電盤の漏電回路と原因の特定
問題の電灯分電盤は主に個室の病室向けだったので、1室ずつ点検する必要がありました。
分電盤内には照明回路とコンセント回路がありましたが、瞬時の漏電なので、コンセントや接続機器の何かに問題がある可能性が高いと考え、コンセント回路から調べることにしました。
患者が入院している病室は点検ができないため、対象となる病室のチェック表をつくり、実施のたびに記録を残し、次の作業者にスムーズに引き継げるような体制を整えて点検を進めました。
病室内での作業はコンセント周辺の目視点検、接続されている機器の点検と動作確認です。主な使用機器は電動ベッドだったので、ベッドを操作するときに漏電警報が発報するか否かを確認しました。警報が発報したら、防災センターより作業者に連絡し、直ちにベッド操作を止める手順なので、双方の連絡を密にすることが大切です。
1日に点検できる室数は限られますので、根気よく作業を進め、ある日、病室のベッドを操作したところ、防災センターより「漏電警報発報!」との連絡が入りました。
コンセント側に異常は発生せず、ベッドに問題があると判断し、メーカーに修理を依頼しました。
なお、今回の確認作業の途中で、ある病室のベッド下でホコリが堆積したコンセントプラグを発見しました(写真1)。当初、これが原因では? と疑いましたが、調べた結果、漏電とは関係ありませんでした。
ただし、放置しておくと付着したホコリと湿気によるプラグの両極間で火花放電が発生し、発火に至るトラッキング現象のおそれがある状態だったので、トラブルが発生する前に発見できたことは幸運でした。

漏電の原因は前述のベッドだけとは限らず、コンセントの外観点検も必要だと判断し、病院側に残りの全室も点検する提案を行いました。
点検を継続した結果、ほかの病室では特に問題はなく、警報発報もなくなりました。
漏電発生から作業終了まで1カ月以上を費やしましたが、懸案が解決して依頼者に感謝されました。
※「設備と管理」2015年3月号に掲載
(回答者/TMES設備お悩み解決委員会)
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