Column
不適切にもほどが……【電気教育、言いたい放題17】
電気科教員の「はてしないグチ」
2025.06.27
第17言「根性七曲高校のベテラン教師たち」
昔から英語が苦手な生徒に限って「なんで英語なんか勉強しないといけないんや?」というギモンを持っていたものだ。
しかし、だいたいが「主要5教科だから」「試験に出るから」「大学入試に必要やから」と、しぶしぶ納得させて不満をグッと飲み込んでいた。
「将来、外国へ行くことなんて考えてないから、英語の勉強なんて必要ないわ」と開き直った強者もいた。
これが、ひと昔前の反応だろう。現在はAIなんて文明の利器により、外国語の通訳や翻訳の機器が市場をにぎわしている。
あくまでもSF的な発想だが、難関進学専門高校や有名私学の特進高校の生徒が「そんな便利なものがあるのに、なんで英語を勉強しないといけないんや?」と質問したら、しっかり納得させられる回答を用意できる英語担当の教師は、いったい、どれくらいいるのだろうか。
納得がいかない答えに対して、ヘソを曲げ、急に荒れて、問題行動を起こし始めたら、どうなるんでしょうか。
「そういうオマエ自身は、どうなんだ!」なんて言われたら、『はい、おっしゃるとおりでございます。ない知恵を絞って電気教育の大切さ、さらにはエネルギー問題、それを人間教育へつなげているつもりです!』と胸を張って主張できることはやっているつもりです。
それはさておき。そんなことを考えると、過去に工業高校で問題行動が増えたことと話は似ているような気がするのは筆者だけだろうか……。
昭和の問題行動が盛んなころ、筆者は教師として学校現場に飛び込んだ。登校時の校門指導でも授業後でも、生徒とガンガンにやりあっていた。
なんとか落ち着いた! と、ホッとしたのもつかの間、ベテランの先生方から「あんな強い指導をして、生徒の情操教育はどうする?」「生徒の自主性は?」なんて指導が入る始末。
『その生徒が自主的に問題行動を起こしているんだけどね』なんて思っていたら、それを表情から読み取ったかのように、雨あられの小言が降ってきた。
「いまの若い先生は指導も管理的なんだからダメなんだ」
「昔の生徒はよかった。勉強もクラブも自主的にがんばっていた」
「こんなんじゃなかったよね」
あまりにも理不尽な指導に、筆者も堪忍袋の緒が切れました。
『じゃあ、だれが悪くしたんですか? 後学のために、どうしたらよかったか適切なアドバイスでもいただけませんかね?』
これまで職員室にいたベテランの先生たちが、クモの子を散らすように目の前から消えていった。このノープランな先生たちの態度に失望しつつ、たまには思いきったことをしてみるもんだと、ほくそ笑んでしまったことは、いまでも記憶に残っている。
その昔、入試選抜では工業高校の平均点数が普通科高校より高い時代があったという。つまり、ベテランの工業科の先生は旧制中学、旧制工業学校、新制高等学校卒業でエリートだったということだ。
筆者のうがった目線で恐縮だが、問題行動を起こした生徒の指導経験がないんだろうな。だから、免疫もない。指導から逃げて、文句ばかり言うようになった。
若いころ、将来、あんなんになるのかな? いやいや、あんなベテランにはならんぞ! と心に誓った。若手からすると、いまの筆者は、どのように映っているのやら……。
かつての刑事ドラマでは「若い刑事は走らされる。犯人が港からボートで逃げても、まだ走らされる。おエラいさんなんか、犯人逮捕の5分前にならないとイスから立ち上がらないぞ!」と揶揄されていた。どこでも若手がソンをするんだよな。でも、立ち上がるだけマシだけどね。

プロフィール
今出川 裕樹(いまでがわ・ひろき)
1960年生まれ。大学卒業後、電気科の教員として工業高校に勤務。時事問題をぶっこみながらポイントを説明するユニークな授業を展開。その軽妙なトークは、爆笑のうずを巻き起こしつつ、内容を理解できるということで生徒に絶大な支持を得ている。50歳を前に電験三種に合格し、現在、二種に向けて鋭意勉強中。
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